✫IMFが試算
クジラは驚異的な進化を遂げた動物というだけではないようです
クジラは炭素を海に隔離することで気候変動を和らげてくれるなど、私たちは恩恵を受けているのです
「生態系サービス」の価値は1頭あたり200万ドル(2億5000万円)という試算を国際通貨基金(IMF)の経済学者らが、同基金の季刊誌「Finance&Developnent」に発表しました
✫クジラの恩恵
巨体でカリスマ性のあるクジラの保護は、自然を守りたい個人や政府がやっている慈善事業のようなものだと一般的には考えられがちです
今回、IMF能力開発の副局長ラルフ・チャミ氏率いる経済学者チームは、そうした人々の意識を変えたいと願いクジラがもたらす恩恵を金銭的価値に変換する試みに取り組みました
クジラの取り込める炭素量をめぐっては化学的な知識にズレがあり、これまでの研究からクジラの保護が地球に大きな見返りをもたらすことは経済学者の目から見ても明らかのようです
チャミ氏は、この結果が「動物のための動物保護に興味がない政策決定者との対話のきっかけになればと思います。クジラは国際的な公益資産であると、全世界が認識すべきです」と語っています
✫炭素を海底へ
ヒゲクジラやマッコウクジラを含む「大型クジラ」が、大気中から炭素を回収して隔離する方法はひとつだけではなくまず、脂肪やタンパク質の多い体内に何トンもの炭素をため込む。泳ぐ大樹と言ってもいいでしょう
死んだあとは、クジラの死骸は炭素もろとも海の底へ沈む。そして数百年かそれ以上の間、炭素を海底に隔離します
2010年の研究では、ヒゲクジラ類のうちシロナガスクジラ、ミンククジラ、ザトウクジラなど8種が、死んで海底に沈む際、合わせて毎年3万トン近い炭素を深海へ運んでいると推定されました
もし、商業捕鯨が始まる前の水準までクジラの個体数を回復できれば、この炭素吸収量は年間16万トンまで増加すると、推測しています
クジラが出す巨大な糞も、CO2吸収に貢献しています
深い海で採餌するクジラは、海面近くで排せつし、同時に窒素、リン、鉄など大量の栄養物を放出します
これが植物プランクトンの成長を促し、ひいては光合成によるCO2吸収を促すことになるのです
プランクトンが死ぬと、吸収された炭素の大半は海洋表面で再利用されますが、一部の炭素は死骸とともにやはり海の底へ沈んで行きます
別の2010年の研究では、南極海のマッコウクジラ1万2000頭が年間20万トンの炭素を大気から海中へ取り込んでいるという報告も出されました
クジラの排せつ物によって世界中で植物プランクトンがどれだけ増えているのかはわからないと、この現象を長年研究している米バーモント大学の保全生物学者ジョー・ローマン氏は話します
そこでIMFのチャミ氏は、現在生息する世界中のクジラが海洋植物プランクトンを1%増加させると仮定し、取り込む炭素の量を計算しました
さらに、クジラが死んだときに隔離される炭素量を、文献に基づいて1体あたりCO2換算で平均33トンとしてこれに加えました
CO2排出量取引の現在の市場価格を用いて、クジラが回収する炭素の金銭的価値の合計を出し、エコツーリズムなどを通してクジラがもたらすその他の経済効果を追加しました
すべて合わせてみると、クジラ1頭の生涯の価値は約200万ドルになると結論付けられました
全世界のクジラで計算すれば、1兆ドル(約215兆円)にのぼる可能性があるとのことです
✫シーシェパード
こういう試算が打ち出されるとあの過激な人たちにとって、ますます大義が立ちますね
個人的には調査捕鯨なんてしなくても・・
と思っていますが、日本には止められない大義があるのでしょうかね